遠富士を仰ぐ校庭入学す
密やかに小米さくらの上高地
剪定は伸び放題の実生木
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柴山つぐ子
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花木倍子城山ほのと昼の月
山の端へ伸びる木道春の雲
母につく夕陽まみれの鷭の子ら
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中川冬紫子
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鳥の巣や生家は信濃日は廻る
初蝶に岩肌荒き谷の風
ジョギングの主婦ら走らす花菜晴
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小林 好子
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力なく波の縞寄す春の風
摘草の夫呼ぶ声の若やげり
開かずの間戸袋鳥の巣なりけり
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山田 礁
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巣箱にも方位あるらむ空家あり
彼岸会の団子ふるまふ念誦堂
連翹の抱ふる夫と括る妻
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山田 鯉公
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春風や畑の真中をランドセル
ペンションの木々に溶け込む古巣かな
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岡村妃呂子
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小鳥らが巣箱作りをせびるかな
山鳩の巣箱あぶなげ風のなか
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黒岩 章
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春暁や戸板をつつく鳥のゐて
ひねもすを小流れの音花山葵
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小林 尊子
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遠浅間青き裾野や岩おぼろ
亀鳴くや草履の鼻緒すげかへる
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佐々木終吉
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シベリアの抑留句碑に桜満つ (上田城跡)
浅間嶺や春の暁ひとり占め
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佐藤かずえ
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熊笹の揺れ穏やかに春の風
潮時の電話のありて春の宵
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佐藤さゆり
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花疲れ高尾の山に人いきれ
うぐいすや農の夫婦に日のやさし
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下谷 詔子
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春風や浅間の嶺を駈ける雲
寄り添うて風雨を凌ぐ菜の畑
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武井 康弘
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黄水仙匂ふ街道六文銭
種蒔くや朝な夕なに覗き見る
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鳴釜 和子
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幾重にも曲がる流れや水温む
火山灰径の木立の間合ひ百千鳥
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星野恵美子
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軒下の何やらせはし雀の巣
石積みの変はりし小みち初ざくら
柔らかく小枝を包む春の雪
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山崎ちづ子
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朝戸出の日を拝しけり東風の中
今年また事務所の軒につばくらめ
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橫沢 宇内
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